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Artist Statement

ver.2022/11/1

 私の作品は、無意識の探求・表出による、人間の全体性の回復を目指したシュルレアリスムに着想を得た表現をコンセプトとしています。カメラの出現により、人はシャッターさえ押せば写真を撮ることが可能になりました。そこに写るものは絵画のように、1から10までの全てが画家の手によって描かれたものとは異なります。そこに、意図しないものが存在している可能性があると仮定し、写真表現による無意識の抽出を試みました。

 

 シュルレアリスムに多大な影響を及ぼした、ジークムント・フロイト( Sigmund Freud, 1856-1939年 )による精神分析では、自由連想法を用いて、無意識領域を顕在化することによる心理的抑圧の開放を目的としました。作品の中で、医師-患者関係を、撮影者-被写体関係になぞらえ、対人関係のプロセスの中で、テラピー的作用が生じていくと考えました。

 

 撮影者-被写体は、はじめに互いに未知の人として出会い「1. 方向づけの段階」から「2. 同一化の段階」へ進みます。互いに自己投影することもあれば、心理的な転移が生じる場合もあります。対人関係理論で知られる、看護学者ヒルデガード・ペプロウ(Hildegard E. Peplau, 1909-1999年 )の看護理論では、そこから「3. 開拓利用の段階」、「4. 問題解決」と、4つの段階へ発展していくとしています。

 

 鑑賞者もまた、作品を見ることによってそれぞれの自己が持つ抑圧された意識に触れるとき、作品と鑑賞者との間へも相互作用が及ぶことを期待しています。

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